<助産師のコア・コンピテンシー 2021>
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助産師のコア・コンピテンシーとは何か
「助産師のコア・コンピテンシー」とは、日本の助産師に求められる必須の実践能力である。
助産師のコア・コンピテンシーは、〈倫理的感応力〉・〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉という4つの要素から構成される。助産師の実践能力としてこれらの構成要素が必要な理由は、『助産師の声明』に示された「助産師の理念」、すなわち〈生命の尊重〉・〈自然性の尊重〉・〈智の尊重〉に根拠がある。
助産師のコア・コンピテンシーの4要素、すなわち〈倫理的感応力〉・〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉の具体的な内容は、『助産師の声明』の「助産師の倫理綱領」および「助産師の役割・責務」に示された実践内容を反映するものである。
コンピテンシー1
倫理的感応力
「助産師の倫理綱領」に示された、助産師活動における道徳的義務を実践に反映する能力。
コンピテンシー2
マタニティケア能力
「助産師の役割・責務 4-1」に示された、妊娠期、分娩期、産褥期、乳幼児期におけるケア提供者としての役割・責務を実践に反映する能力。
コンピテンシー3
ウィメンズヘルスケア能力
「助産師の役割・責務 4-2」に示された、ウィメンズヘルスにおけるケア提供者としての役割・責務を実践に反映する能力。
コンピテンシー4
専門的自律能力
「5.助産管理における役割・責務」および「6.専門職としての自律を保つための役割・責務」に示された内容を実践に反映する能力。
助産師のコア・コンピテンシーのイメージ図
解説
助産師のコア・コンピテンシーは、〈倫理的感応力〉・〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉という4つの要素で構成される。
〈倫理的感応力〉は、〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉を働かせるときに必須の基礎的能力である。〈倫理的感応力〉の豊かさは〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉に反映する。同時に、〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉の高まりに応じて〈倫理的感応力〉はその拡がりや深まりを増す。このように〈倫理的感応力〉と〈マタニティケア能力〉・〈ウィメンズヘルスケア能力〉・〈専門的自律能力〉とは相互的で循環的な関係にある。
助産師の理念(生命の尊重、自然性の尊重、智の尊重)は、助産師の4つのコア・コンピテンシーの中心に位置し、各能力を適切に方向づける役割を果たしている。
コンピテンシー1 :〈倫理的感応力(※1)〉
「助産師は、対象一人ひとりを尊重し、そのニーズに対して倫理的に応答する。」
解説
助産師は、対象となる一人ひとりの女性と子どもおよび家族を尊重し、敬愛と信頼に基づく相互関係を基盤として活動することによって、生命の尊重・自然性の尊重・智の尊重という助産師の基本理念を、行動として具体化する専門職である。そのために助産師には、対象となる女性と子どもおよび家族の生命や人間としての尊厳と権利を最大限に尊重するために相手のニーズを的確にくみ取り反応する能力、女性と子どもおよび家族との間に信頼関係を築きつつ平等で最善のケアを提供する能力、女性と子どもおよび家族に関する情報の保護を徹底しケア対象者のプライバシーを守る能力が求められる。
助産師は,
(※1)倫理的感応力
対象となる人々の行為や言動の意味を心に感じ、倫理的に応答する能力。「倫理的に応答する」とは、対象とかかわる中で援助を必要とするニーズを見極め、対象と情報を共有しながら対象にとってより善い選択ができるように支援していくこと。
コンピテンシー2 :〈マタニティケア能力〉
「助産師は、分娩を核とするマタニティサイクルにおいて、安全で有効な助産ケアを提供する。」
解説
助産師は、妊娠期、分娩期、産褥期、乳幼児期における、母子および家族のケアの専門家である。よって、もてる知識や技能を統合し、全期を通じて母子および家族に必要なケアを提供する。自己の責任のもとに正常な分娩を介助し、新生児および乳幼児のケアを行う。支援にあたっては、女性の意思や要望を反映できるように、支援計画・実施・評価を行い、ケアの向上に努める。母子にとって安全で、満足な分娩が行えるように支援する。
高度医療の発達に伴い発生するハイリスク児の誕生から乳幼児期にいたるまで、継続的に児の発達水準に対応した育児ができるように、他の専門職種との協働において母親および家族を支援する。また、出生前診断などの先端医療に関して、医師や他の専門職種との連携をとおして支援する。
助産師は,
コンピテンシー3 :〈ウィメンズヘルスケア能力〉
「助産師は、女性の生涯を通じた支援者であるとともに、相互にパートナーシップを築く。」
解説
助産師は、女性の健康の保持・増進を促し、女性が自己の健康管理を行えるよう日常生活上のケアを通して支援する。具体的には、リプロダクティブ・ヘルス/ライツの視点から、女性のライフステージや遺伝などの家族全体に関わる課題において、健康教育、知識の普及・啓発、健康相談、保健指導を行い、健康をめぐるさまざまな問題に女性が対処できるよう支援する。
助産師は,
コンピテンシー4 :〈専門的自律能力〉
「助産師は、専門職としてのパワーを組織化し、社会に発信する。」
解説
助産師は、自律した専門職者として施設を自ら経営または経営管理に参画して、緊急時の適切な対応や医療事故防止に努め、保健・医療・福祉に貢献する。 助産師には、自律性のある専門活動を維持し向上させるために、専門職能団体を組織して社会的な活動を行い、情報を発信するとともに、助産領域の研究に参画し、助産師間やケア対象者、医師、他の専門職との相互交流を通じて、助産ケアの改革や質の向上を目指す能力が必要である。後輩助産師を育成する能力や、継続的に自己研鑽する能力も、自律性のある専門活動を維持・発展させるために重要である。
助産師は,