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安全への扉

同一の分娩機関における複数の産科医療補償対象事案から助産師の研鑽を考える

2020 年 9 月
原因分析委員会委員 高田昌代

産科医療補償制度では、同一の分娩機関において複数の補償対象事案があり、複数事案の原因分析を行った結果、これまでの原因分析報告書で指摘された事項について改善が見られず、同じような指摘が繰り返し行われることになった場合、当該施設に対し原因分析報告書を送付する際に、指摘事項について一層の改善取り組みを要請する「原因分析報告書の送付にあたり」という別紙(要望書)(以下、「別紙」)を送付し、その半年後を目途に当該施設から取り組み実施報告を求める対応を行っている。

産科医療補償制度開始から 2020 年 5 月末までで 94 件の「別紙」が送付され、指摘事項に対して一層の取り組みが要請された。そのなかで最も多い改善指摘事項が「胎児心拍数陣 痛図の判読と対応」、次いで「診療録の記録」、「子宮収縮剤投与方法」である。同一の分娩機関において複数の補償対象事案というのは、改善されていれば起こらなかった事案であるとも解釈でき、これらの補償対象事案には、助産師をはじめとする看護スタッフが少なからず関与している。

現在、就業助産師のうち約 3人に 1 人がアドバンス助産師の認証を受けており、胎児心拍数陣痛図の判読をはじめ、記録や子宮収縮剤の投与についても必須研修として全員が受講するようになっている。しかし、本来は分娩に携わる助産師全員が、専門的知識を理解し、対応する能力が求められる。助産師たちには、引き続き胎児の健康と親の安心・安全のために、生涯教育の強化が求められる。2020年度はアドバンス助産師の更新年である。助産師は母と子を守っていくために、専門職集団としてこの研鑽を緩めてはならない。

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